異界からの少女―少女の名は―


今宵…この家に二度目の湯気が上がる。
いつもは寂しいリビングには
5人の人間がいた。

「美味いな…」
「おぉ・・・」
夕刻ほどにセツナが頬張っていたシチューを
今まさに食べているものが2人。
いきなりどこからともなくやってきて
盗賊の上に着地したというあの2人だ。
「黒識・・・」
「あ?」
「これ食い終わったら御手洗団子な」
ズルッ…ゴンッ!!
黒識と呼ばれた男が見事に滑って頭を打った;
「おめぇ…まだ食うのかよ;」
「阿保…甘いものは別腹だ」
「…なんだその定義は…;」
机に突っ伏した黒識を見ながらさも当然に言い放つ女。
姿はセツナにそっくりではあるが…
性格はまったくもって違うようだ。
「あの…」
「「あ?」」
セツナに声をかけられ黒識は顔を上げ
セツナ似の女はセツナの方を向いて反応する。
「まだ…お名前を聞いてないのですが…?」
「ぁー・・・俺は黒識…で、こっちが」
「私にこれといった名はない」
・・・・・・は?
"これといった名はない"?
「何言ってんだ雪っ…」
何か言いかけた黒識を高速で裏拳で吹っ飛ばす。
「黙れ・・・」
はっきり言って・・・
めちゃ怖いです…この女;
「・・・ぇ、ぇと…;でも、なんて呼んだら良いのか…;」
「血桜咲かすは銀雪鬼」
「は?」
ポツリと声を漏らしことに反応する。
「私の通り名だ。…銀雪鬼とでも呼べば良い」
「ぁ、は、はい!銀雪鬼さん…ですね」
「はぁ・・・」
銀雪鬼は軽い溜め息をつく。
「ぁ、私の事言ってませんでしたよね。私は…」
「良い」
「ふぇ?」
「知ってる…だから…良い。少し…外に出てくる。ついてこなくて良い」
「ぁ・・・はい・・・」
ズルズルと黒識を引きずり家の外へとでて行く。
・・・床に…多少血の跡が・・・;
あえて…そこは気にしないでおこう。

「はぁ・・・」
家の外でもう一度
軽い溜め息がでる。
「てっめ…きなり何しやがんだ!」
額を抑えた黒識が銀雪鬼にくってかかる。
「止めなければ貴様が名前を言ってしまうから」
さらりと答える。
「・・・は?」
「本名を知られたくなかっただけだ。それに知ったらしったでややこしいだろうが;」
「そう…なのか?って、だからっていきなり裏拳かます事はぁねぇだろうが!」
「その場のノリだ」
「Σあれがか!?」
それはそれでなんとも凄いノリである。
に、しても・・・
こいつ等は漫才コンビか?
「ったく…言葉で言えよな;」
「言ったが聞かなかったのは貴様であろう、黒識?」
「・・・っ悪かったよ。で、あいつの自己紹介は聞かなくて良かったのか?」
「あぁ、かまわん。知っているからな」
「…それさっきも言ってたな…どういう事だ?」
黒識の言葉を聞いて
話が長くなりそうだと思ったのか
銀雪鬼は壁に背を預ける。
「セツナ・ハーウェット…現在はおそらく13か14歳の小娘だ」
「セツナ…?セツナって…お前だろ?」
「馬鹿が…良く聞いていたか?セツナ・ハーウェットだ!」
少し口調を強くして再度言い放つ。
一字一句…間違いなどないように。
「私は…セツナはセツナでも・・・神無月 雪那だ」
「ぁー…でも、良いじゃねぇか。どうせまたすぐに旅発つんだろ?一晩くらいなら…」
「しばらくここに居る事になりそうだ」
「・・・は?」
本日何度目だろうか?
銀雪鬼こと雪那は
唐突に物事を言う。
「微かだが…盗賊…だったか?あいつらから気配がした」
「気配って…まさか」
"気配"…その一言を聞いて黒識も一気に真剣になる。
どうやら彼女たちに関わる重要なキーワードらしい。
「そのまさかだ。…微ではあるが…我が妹…雪祢の魔力がまとわりついていた」
「って事は・・・」
「近くに持っている奴がいる」
「…成る程な。で、どうする?」
「何がだ?」
「持っていたとして…また抵抗したらどうするかと聞いてんだ」
「…かまわん…殺してでも取り返せ」
「それで良いんだな?」
「あぁ…もとよりて私は闇…今更血に汚れるなど問うたりせんわ」
「・・・わかった。我が主人の仰せのままに」
「頼んだぞ…黒識」
彼女達の会話を理解できる者は何人いるのだろう?
わかっているのは少しだけ…
彼女の名は雪那であり
黒識と言う下僕を従え
なんらかの理由で
雪祢と言う
雪那の妹の魔力を持つ者を探している。
そして
それを取り戻す際に
相手が抵抗すれば
生死は問わないと言う事。

そして・・・
闇夜から
彼女達を見る者が2人・・・
金髪の長髪で
左眼が前髪で隠されており…
漆黒の服に身をまといし者。
赤髪の長髪で
二つ縛りにしており…
黒きローブに身を隠している者。
彼女達の長いようで短い戦いは
翌日…幕を開ける。


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